西上寛の日々ブログ

関東随一の茶産地 狭山

2016/05/25

『色は静岡 香りは宇治よ 味は狭山でとどめさす』
そう謳われている武蔵国の茶産地 狭山は他の茶産地同様 鎌倉時代に狭山丘陵一帯で栽培されました
当時は「河越茶」(河越は 現在の川越のこと)と呼ばれていたそうです

狭山茶の産地は 関東ローム層の上に展開しています
関東ローム層は関東地方に分布する火山灰起源の地層群の総称であり 第四紀更新世の火山活動に由来して出来上がっています
特に南関東は富士山や箱根山の 北関東は榛名山や赤城山の影響を受けた火山灰土です
関東ローム層の土壌は 粒子が細かいため 乾燥すると風で舞い上がってしまいます また 火山灰土は一般に水を通しやすく 水田には向きませんが 川が無いことと相まって 台地上は開発の難しい条件にありました
一方 台地に刻まれた谷は 小河川によって形成された沖積地であり土壌は肥沃です
台地のへりを流れる小川や湧き水が豊富なこともあり 古くから谷津田が造られ 稲作が営まれてきました

つまり 台地上は水はけは良いのですが 農産物に適していないといえます
茶の木は 水はけが良く 霧が発生しやすいところであれば 栽培可能なため 昔から霧の発生しやすい関東平野(関東ローム層)では 茶の生産に向いていたと言えます

関東ローム層の断面です

埼玉県には埼玉県茶業研究所があり 茶の木の品種育成や品種改良を盛んに行ってきました

以下 一般社団法人 埼玉県茶業協会さんのホームページから抜粋させていただきます
さやまかおり  埼玉県茶業研究所 昭和46年育成
やや早生。寒さに強くてたくさんとれる。味は濃厚。埼玉県で育成された品種の中でもっとも多くの地域で栽培されている。

ふくみどり 埼玉県茶業試験場 昭和61年育成
中生。甘い花のような香りとさわやかな味が特徴。たくさんとれて、寒さにも強い

ほくめい 埼玉県茶業試験場 平成4年育成
やや晩生。寒さに強く、たくさんとれる。すっきりとし味わい。

むさしかおり 埼玉県茶業試験場 平成9年育成
中生。寒さに強く、味がよく香りがさわやか。やや葉が小さい

さいのみどり 埼玉県農総研茶業特産研究所 平成15年育成
やや早生。病気に強く、つくりやすい。お母さんの「さやまかおり」によく似ています。

ゆめわかば 埼玉県農総研茶業特産研究所 平成18年育成
中生。寒さや病気に強い。味がよく、軽くしおれさせてつくると花のような香りがする。

私自身は さやまかおり と むさしかおり と ほくめい は検茶させていただいたこともあります
「・・・かおり」と銘打たれていることもありますが 花のような 非常に香りの良いお茶に仕上がります

IMG_35狭山(葉)
写真は 茶のみの2016年新茶「武蔵狭山茶」です
今年はヤブキタを仕入れました

IMG_35狭山(水)
濃緑色の水色と香りも良いです
火入れは「狭山火入れ」と呼ばれる 静岡茶や宇治茶よりも強い火入れで 熱いお湯で淹れても 香り立ちが良い いいお茶です

江戸時代には 大都市江戸 に一番近い産地ということもあり 蒸し製煎茶が確立された江戸後期には かなりの生産量を誇りました
武蔵狭山茶  江戸の昔に想いを馳せて 江戸っ子のように「アッチッ!」と言いながら愉しんでください

IMG_35狭山

今回も最後までお読みいただき ありがとうございます(多謝)

【おまけ】
狭山3
狭山の茶園は 関東平野にあるので 広々と大きいです